ボンベではなく、バルク貯槽またはバルク容器による供給方式についてご紹介。
貯蔵量と使い道によって基準が変わるのがポイントです。
記事のもくじ
丸覚えキーワード
- 貯蔵量によって異なる基準
- バルク容器とバルク貯槽とは
- 特定供給設備
- 使い道によって異なる区分
- バルク容器の特徴
- バルク容器の設置場所
- バルク容器の設置ルール
- バルク貯槽の設置ルール
- 新型バルクローリ
キーワードの解説
貯蔵能力と使い道によって基準が変わるのがポイントと前述しました。
ボンベやバルク容器で供給する場合、バルク貯槽で供給する場合で基準が変わります。
貯蔵量によって異なる基準
ボンベやバルク容器であれば3,000kg以上、バルク貯槽の場合は1,000kg以上で「特定供給設備」という区分けになります。
また工業用の場合は3t~10t未満で第二種貯蔵所の届出、10t以上の場合は第一種貯蔵所許可が必要です。
特定供給設備になると所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて完成検査に合格しないと使用することができなくなります。
50kgボンベで58本とかのボンベハウスが多いというのもこれが大きな理由です。
バルク容器とバルク貯槽とは
では、「容器」と「貯槽」は何が違うのか?
これは、移動できるものが「容器」、固定されているものが「貯槽」となります。
特定供給設備に該当しないように、貯蔵能力980kg型バルク貯槽(バルク容器は3,000kg未満)が一般的。
バルクローリ(充填設備または移動式製造設備)によってLPガスが充填されます。
サムネイルに使っている画像だと、使用時は埋められている(固定されている)のでバルク「貯槽」になりますね。
特定供給設備
特定供給設備には都道府県知事の許可が必要となります。
許可申請
許可を受けるための申請に必要なのは、
- 他の施設との位置関係を含む特定供給設備の位置、構造及び付近の状況を示す図面
- 特定供給設備の所在地を管轄する消防長または消防署長の意見書
といった2つが必要です。
図面と意見書を添付して申請書を提出すると、完成検査を受けて合格すれば設備を利用することが可能になります。
許可を受けた後に何らかの軽微な変更をした場合は許可をした都道府県知事に届出が必要となります。
他の施設との位置関係
申請のためには他の施設との位置関係を示した図面が必要です。
これは他の施設の安全を確保するための距離が十分に取れているかを確認するためのもので、専門用語では保安物件までの距離と呼ばれます。
設置するガスの貯蔵能力と周囲を覆う壁がある場合、ない場合で保安物件までの必要距離は変わります。
保安物件に対して取らないといけない距離(構造壁等なし)
LPガスの貯蔵能力 | 第一種保安物件 | 第二種保安物件 |
1,000kg以上3,000kg未満 | 7m以上 | 7m以上 |
3,000kg以上10,000kg未満 | 16.97m以上 | 11.31m以上 |
保安物件に対して取らないといけない距離(構造壁等あり)
LPガスの貯蔵能力 | 第一種保安物件 | 第二種保安物件 |
1,000kg以上3,000kg未満 | 0m以上 | 0m以上 |
3,000kg以上10,000kg未満 | 13.58m以上 | 9.05m以上 |
第一種保安物件は病院や学校など、第二種保安物件とは一般の住宅です。
で紹介している施設距離とは違うんじゃね?
とお考えの方もいるかもしれませんが、
今回は「特定供給設備」についての施設距離であるため、混同しないようにお願いします。
軽微な変更
軽微な変更とは、
- 特定供給設備の消火設備(消火器)の変更
- 特定供給設備に係る換気孔の増設
- 特定供給設備の廃止
といった3点があたります。
使い道によって異なる区分
使い道というのは、一般消費者向けか工業用かで法律が変わります。
一般消費者用であれば液化石油ガス法、工業用の場合は高圧ガス保安法の適用を受けます。
先程バルクローリの()に充てん設備または移動式製造設備と書きましたが、一般消費者用であれば充てん設備として、工業用であれば移動式製造設備として扱われるからです。
法律の適用が異なるのは、それぞれの取扱いが変わるからですね。
バルクローリ
バルクローリとは、こんな感じの大型トラックです。
大抵タンク部分や車体の横に会社名が入っているので見かけたこともあるのではないでしょうか。
バルクローリによって、バルク容器へのLPガスの充てんが行われます。
バルク容器の特徴
バルク容器は見た目は大きいボンベですが、ボンベに比べて多くの付属品がついています。
ボンベ容器はバルブと安全弁がついているシンプルな構造ですが、バルク容器には安全弁や液面計、過充てん防止装置、液取入バルブ、ガス取出バルブ、均圧バルブ、それぞれの機能に紐づく緊急遮断装置などがついています。
※弁=バルブと考えて下さい。
イメージ図にするとこんな感じ。
バルク容器はにぎやかですよね。
刻印・塗装・検査
ボンベ容器のルールと異なる部分は、見やすい場所に「液化石油ガス(LPガス)」および「火気厳禁」を赤で書く必要がある点と緊急連絡先を記載する点、塗装でさびにくい処理をしないといけないという点があります。
刻印について
刻印については別記事でも記載していますが、こちらでも掲載します。
- 検査実施者の名称の符号
- 容器製造者の名称またはその符号
- 充てんすべき高圧ガスの種類
- 容器の記号(3文字以下に限る)および番号(5桁以下に限る)
- 内容積(記号V、単位L)
- 付属品(取り外しのできるものに限る)を含まない容器の質量(記号W、単位kg)
- 容器検査に合格した年月
- 耐圧試験における圧力(記号TP、単位MPa)およびM
- 内容席が500Lを超える容器にあっては、胴部の肉厚(記号t、単位mm)
- 高強度鋼またはアルミニウム合金で製造された容器にあっては、材料の区分(記号 高強度鋼HY、アルミニウム合金)
上記の内容に加えてバルク容器の独自ルール見やすい場所に「液化石油ガス(LPガス)」と「火気厳禁」を朱書。
緊急連絡先をを背景色に対して明瞭な色で表示。
※ボンベ容器の場合は「燃」の朱書、所有者の表記でしたね。
ガスボンベの容器についてのルールは下記事で詳しく解説しています。
製造から20年未満のバルク容器の検査は20年に1度、20年以降は5年ごとに気密検査や耐圧検査が義務付けられています。
バルク容器の設置場所
設置場所については、事故が起きないような場所として条件が定められています。
そりゃそうだ、という内容ばかりなので流して下さい。
- 受け入れ者もしくは一般消費者等の所有または占有する土地内であって、屋外の痛風の良い場所
- 地すべり、山崩れ、洪水、地震などによる有害な影響を直接受けるおそれのない場所
- 地盤の不同沈下などにより、バルク容器その他配管系に有害な影響を及ぼすおそれのない場所
- 地盤面から5cm以上高い平坦なコンクリート盤などの水平な場所
- バルク容器にバルクローリなどの車両が接近する事のないように宴席などの措置を講じてある場所
- 貯蔵能力1,000kg未満のバルク容器の場合、夏季においてもバルク容器の温度を40℃以下に保つため、直射日光に長時間さらされない場所
また、貯蔵能力1,000kg以上のバルク容器の場合、不燃性または難燃性の材料を使用した軽量な屋根または遮へい板を設けること。 - バルクローリの通行、充てん作業に支障がない場所
- 周辺に可燃物などのない、または置かれるおそれのない場所
次は設置方法について
バルク容器の設置ルール
場所を選んだら安全に配慮します。
設置転倒防止措置をとる、点検や保守のことを考えて設置する、ガス漏れに対応する、消火設備を用意するというのがルールになります。
具体的には
- スカートまたはサドルなどを基礎に設置すること。
- 点検や充てん作業、バルク容器などの交換に必要な作業スペースが取れるように設置すること。
- プロテクター内にガス漏れ検知器を設け、常時監視システムと接続すること。
- バルク容器のガス取り出しバルブにはガス放出防止器または緊急遮断装置を取り付けること。
- 貯蔵能力1,000kg以上のバルク容器には消化器(能力単位A-4およびB-10以上のもの)を用意する。
以後、1,000kgにつき1個以上増やす。
こちらが基本ルール。
3はガス漏れ検知器を設置しなくてもよい場合が、4は容器のサイズによっては別の措置を取ると設置しなくてもよいとされています。
ガス漏れ検知器を設置しなくてよい場合
ガス漏れが起きた時に滞留しない場合は設置しなくてもよいとなっています。
サイズと距離をまとめています。
サイズ | 距離 | 構造物 |
150kg未満 | 水平3方向周囲1.3m以内 | 高さ1.5m以上の構築物など |
150kg以上300kg未満 | 水平3方向周囲2m以内 | 高さ1.5m以上の構築物など |
300kg以上1,000kg未満 | 水平3方向周囲4m以内 | 高さ1.5m以上の構築物など |
1,000kg以上 | 3m以内かつ 対面する2方向10m以内 |
高さ1.5m以上の構築物など |
なお、貯蔵能力に関わらず、LPガスの漏洩の有無の確認を3カ月に1回以上実施したときはガス漏れ検知器を設置しなくてもよい。
ガス放出遮断器または緊急遮断装置をつけなくてもよい場合
貯蔵能力70kg以下のバルク容器に限って、かつ下記のどちらかの措置をした場合はつけなくてもよいとされています。
- バルク容器は鉄鎖などによりbるくよう気を家屋その他の構築物に固定する。
- 供給管との接続に継手金具付き高圧・低圧ホースを使用する。各ホースの長さはバルク容器の基礎から建築物までの距離1.5mあたり10cm以上の長さがあること。
バルク容器70kg以下ってことは50kgボンベでええやんって思うんだけど、なんであるんでしょね。
LPガスが滞留しにくい設置をする
調整器との位置関係はボンベと変わりません。
プロテクター内に設置する種類の調整器があるので、こちらを覚えておきましょう。
- バルク容器と調整器との間の高圧部を少なくすること。
- 調整器および高圧配管などはバルク容器より高い位置に取り付ける。
- 単段式調整器、二段式一次調整器はプロテクター内に、二段式一体型調整器はできるだけバルク容器に近い位置に取り付ける。
バルク貯槽の設置ルール
直接埋設する場合のルールやさまざまな安全装置について覚えておきましょう。
直接埋設する場合
本体と配管を絶縁継手+電気防食することで安全を担保する。
新型バルクローリ(充填設備)の機能には、ポンプの起動・停止、遠隔操作での緊急停止、インターロック(自動停止機能)がある。
自動停止機能が反応する条件
- 操作箱内のガス漏れ検知(規定値異常)
- 異常な衝撃を検知
- 操作箱の扉が開いた(発動すると遠隔で供給再開は不可)
カップリング溶液流出防止装置
接続、切り離し時に流出しないようにするもの。
過充填防止装置
液面が所定位置に達した際に液受入弁が閉まる。
バルク貯槽に対しての安全装置。
バルク貯槽の液面計
スリップチューブ式。
まっすぐなチューブを上下方向に動かし、大気中に放出した点が液面の高さとする方式。
フロート式も採用されている。
連結弁方式
安全弁と元弁が連結、安全弁を外すと元弁が閉まる。
手動弁方式
安全弁と元弁が別、元弁を占めずに安全弁を外すと漏れる。
ガス放出防止器を設置しない場合
地上設置の供給管はプロテクタ出口部と基礎上に設置した指示構造物(アングル)に固定する。
調整器はプロテクタにつける。
新型バルクローリ
バルクローリと言われるとピンとこないですが、タンクローリー車をイメージしていただければ大体あってます。
基本的な構造は高圧ガス保安法の従来型バルクローリと同様で鵜sが、行動に注射して一般家庭に設置されているバルク容器やバルク貯槽などにLPガスを充てんすることから、保安面での機能強化が図られた構造になっているのが特長です。
新型バルクローリのもっている機器
- 鋼線編組式でできている充てんホース。
先端から60cm以内に安全継手。
安全継手には充てんホースに異常な力がかかった時に自動的に分離して漏えいしないように遮断する機能がある。
先端にはカップリング用液流出防止装置。 - LPガスの送り出し・受け入れ配管には液状のLPガスで満たされることを防止する機能のある緊急遮断装置
- 液面計・圧力計および温度計を設ける
その他の条件としては、
- 貯蔵設備が容器であること
- LPがスが通る部分は
・バルク告示で定める耐圧試験および気密試験に合格するものであること
・降伏を起こさないような肉厚のものであること - ポンプまたは圧縮機の起動・停止スイッチは遠隔操作ができること
- 定義されている機器を有すること
- 駆動させるための発電機を設ける場合は火花を発生しない機構のものであること
- 誤発進防止装置を設ける
- 本体に緊急停止スイッチを固定し、かつ遠隔操作ができる携帯式の緊急停止スイッチを設けること
- 充てん中に異常を検知した場合に充てんを自動的に停止する機能がある装置(インターロック)を設けること
安全に配慮された仕様になっています。