第二種販売の資格を獲得して一人前のガスマン・ガスウーマンを目指すことになった方は様々な研修を経て、業務にある程度慣れた状態で試験を受けているので既にご存知かもしれません。
転職によってLPガス業界へ入ろうとしている方にとっては、「どういったことをしているのか」「自分が会社の力になれるのだろうか」と気になっているのではないでしょうか。
私も全くの異業種からの転職で入社したので、気持ちはよく分かります。
異業種から見たLPガス業界と、1年半でつかんだ実態をご紹介します。
あくまで私が勤めた会社の内容であるため、業界の全て!とは言えません。
参考程度にしていただいて、勤める時はあなたの会社に確認していただけると幸いです。
この記事を読むとこんなことが分かります。
- LPガス会社の組織構成と勤務実態
- LPガス会社の業務内容
- LPガス会社の将来性
それでは、順番に見ていきましょう。
記事のもくじ
LPガス会社の組織構成と勤務実態
会社によっては卸売りやガス機器の一次代理店などもおこなっている会社もありますが、大まかに分ければガス会社の業務は「保安」、「配送」、「工事」これに加えて「営業」、これらを支える事務・物流部門などで構成されています。
保安・配送・営業は外回りで事務や物流は内勤ですね。
配属された際にどういった職種になるかは本人の適正や経験によって変わるかと思いますが、それぞれが支え合ってひとつの会社を作っていると考えてもらっていいかと思います。
残業について
私の働いた会社は、工事、配送、内勤、物流は繁忙期以外はほとんど残業なし、繁忙期でも月間で20時間未満でした。
営業と保安などの外回りは月間40時間くらいですかね。
もちろん、スタッフによって差はありますが、全体的な傾向として外回りの場合は自社に戻ってからの事務仕事があったので、残業せざるを得ない環境にあったのかと思います。
土日は休めるの?
土曜日は隔週出社、日曜日も業務はあるので、事務所の人数によって日直当番が回ってきます。
日直の場合は振替休日を取得するか、手当をもらうか選べます。
平日に比べれば業務件数が少なかったので、手当を常にもらって全然休んでないスタッフとかいましたね。
その他の出勤や業務
男性の場合は事務所の人数によって会社に泊まる「宿直」またはトラブルが起きた時に対応する夜間当番があります。
夜間当番は出動があると残業扱いになりますが、動けないと困るので当番の日は飲酒禁止。
事務所の人数が少ないと、当然回ってくる頻度が高いのでお酒が好きな人はつらいかもしれません。
安全を守るのが仕事なので仕方ない部分はあるのですが、仕事以外にも拘束時間がそこそこあるなーという印象でした。
では、次はそれぞれの業種を見ていきましょう。
LPガス会社の業務内容
ガス会社の業務は「保安」、「配送」、「工事」これに加えて「営業」、これらを支える事務・物流部門から構成されています。
私は事務職で営業向けのチラシやら営業ツールやらを作っていました。
仕事で手伝うことが多かったので記事の内容も営業に関係することや事務作業に関係することが主体になっています。
「保安」業務について
ガスの供給開始をする開栓業務、引っ越しなどで供給停止をする閉栓業務、問題がないか確認するためのボンベハウスの設備点検や、お客さんのご自宅の安全確認などが主業務です。
点検する際にお客さんの立ち合いをお願いする場合があって、時間をもらえる時やお困りごとを聞くこともあるので、営業的なことをすることもあります。
ガス漏れが起きた時に一番に駆けつける保安マン。
※保安に限らずスタッフが現場の近くにいれば誰でも駆けつけます。
職人肌の人が多かったので個人的には好きな人が多かったですね。
緊急車両としてパトカーっぽい車両で急行します。
なおパトカーっぽいだけで、警察車両とは異なるため道路交通法の規制は受けたりします。
点検って何するの?
LPガスの場合は3年または4年に一度、設備の点検が法令によって義務付けられているため入居者にアポを取ってます。
設備の点検をずっとすっぽかしたりした場合は、保安閉栓ということでガスを止めたりすることもあります。
ガス会社にとってはガスを使ってもらうことで収益を得ているので、閉栓したくないんですけど、安全のためには仕方ないんです。
え?お金を払ってないから止められた?
はい、都市ガスの場合はそこそこ長い間待つ場合もあるのですが、LPガス会社は割とあっさり止めます。
インフラって気の長いイメージがあったので、都市ガス物件に住んでいた人間の感覚からするとびっくりしたのですが、毎月の閉栓予定日を定めて支払い期限内に入金がなかった場合はガスの供給停止となります。
もちろん、支払ってくれればガスの供給は再開しますが、払わないでガス止めになる常連はそこそこいました。
「お客さんの気持ちになりなさい」
ってずっとスタッフに伝えてきたものの、こういった常連さんの気持ちになることは難しかったです。
「配送」業務について
ガスボンベを積んだトラックや新型バルクローリなどで供給している一戸建てや集合住宅、あるいはボンベハウスに充てん済みのボンベを配送して空になったボンベを回収する配送員さん。
ガスの消費量を集中監視システムなどで確認して配送先を設定する管理者で構成されています。
充てん場がある場合は、空になったボンベへの充てん作業なども兼務していることが多いですかね。
お客さんがガスを使いたいのに、ガスの残量がなくて使えないなんてことが起きないように働いてくれているのが配送部門です。
盆や正月でも休めないので、時期をズラして休んでいます。
「工事」業務について
ガスを使えるようにするために地中に配管を通す場合があります。
新規の配管埋設や老朽化してきた配管の取り換え、ボンベハウスの建設や建て替えなど、ガスの供給業務に関連する工事をおこなう部門です。
ガス漏れなどの緊急時に、ガス漏れの量が多い場合や地中に埋まった配管が原因である場合なども工事部門が活躍します。
いわゆる二次対応部隊ってやつですね。
次の「営業」に少し関連しますが、住宅設備や家電の設置、リフォームなどのライフスタイル関係の工事をする実働部隊として動く場合もあったりします。
何か新しい事業が開始されたら色々覚えることが増えるので歓迎して欲しいかも。
「営業」業務について
一般消費者向けの営業職と、法人向けの営業職で携わる業務は変わります。
一般消費者向けは戸建てのお客さん、法人向けは管理会社やオーナーさん、あるいは工場などの大きな契約になることが多いです。
一般消費者向けの営業職
一般消費者向けの営業職が取扱う商材は、会社によって特色が出ますが、基本的には幅が広いです。
ガスを供給しているご家庭へのご用聞き(飛び込みではない訪問販売)をして、必要そうなモノやサービスを販売・契約するというのが主な業務です。
商材が多岐に渡るので日々の勉強が欠かせない。
でも時間がないので勉強ができない…結果的に売れないってなります。
得意分野をひとつでも持っているとつぶしが利くので、真剣にやるなら割といい経験を積めると思います。
ざっくり挙げるとこんな感じ
- ガス機器販売
- ガス機器リース
- でんき
- 家電
- リフォーム
- 太陽光
- 蓄電池
- 水
私が勤めていた時に一番絡みがあったのも一般消費者向けの営業職なので、幅広いジャンルのチラシを作ったり営業職の悩みを聞かせてもらいました。
ガス機器関連は詳しい人の方が多いと思うので、ガス機器においてはエネファームなどの新しめの商材、ガス機器とは別商材のでんき、家電、リフォーム、太陽光、蓄電池、水などの記事を書くことでお手伝いをします。
法人向けの営業職
集合住宅のオーナーや地主さん、集合住宅を管理している管理会社、飲食店や工場の企業に「ウチのLPガス使いませんか?」と提案して契約を取ってくる。
集合住宅のガス機器の点検や修理・交換の実働部隊として動くなどが主業務です。
新規契約の際に、〇〇年ウチのLPガスを使ってくれるっていう契約を結んでくれたら××円投資しますよーという「投資」したり、通常▲▲円の単価を△△円にしますよーと社内外において交渉する機会があるのでLPガス業界内であれば最もつぶしが利く経験が積めるかも・・・しれない。
新築の場合は配管などの段階からお手伝いすることもあるので、「工事」部門との関係がけっこう強くて現場を分かっている人の方が仕事は円滑に進みます。
私たちが、エ〇ブルとかセン〇ュリー21とかに電話して、コールセンターに繋がって「業者を手配しますー」と言われてやってくる「業者」がガス会社の社員であることもあります。
工務店さんとかにお願いして施工をしてもらう場合もあったりしますね。
「事務」業務について
総務、経理、人事についてはイメージ通りなので割愛します。
お客さんからの電話を受ける、開栓、閉栓、点検などの業務を手配する、消費者向けの請求書を送る、督促するなどお客さんとやり取りする業務。
料金の見直し、見積の作成や、売上関連数字のリスト作成、設計、社内のIT化、パートナー企業との折衝、営業ツールやミニコミ誌(月間で配ってるお知らせ)の作成などの間接的にお客さんと関わる業務。
といったお客さんと直接関わるか、間接的に関わるかという点で事務業務は分けられると思います。
私は間接的に関わっていたので、電話当番や日曜の電話当番、宿直の時くらいしか直接的な関りはありませんでした。
お話するのは好きなので、電話当番は楽しかったんですよね。
「チラシ見て電話したんやけどー」
とか言われたらテンション上がってましたし。
こちらも業務にはしっかり関わったので、色々紹介していく予定です。
「物流」業務について
消費者にとっては、ほとんど触れることがないであろうガスメーターや、配管設備などに始まり、給湯器やガスコンロなどの身近なガス機器に至るまでの商材を仕入れて倉庫へ格納。
仕入れ先の商社との折衝や工事や営業が外回りにいくまでに必要なものを手配するのが物流業務です。
対外的な知り合いも増えるし、交渉力もつくので配属されたらいい経験が得れると思います。
荷受けや倉庫の整理もするので、肉体労働的な側面もあります。
普通なら痩せる・・・でしょ。
LPガス会社の将来性
給与は決して高いとは言えず、年功序列の傾向が強いため大きく上がることもありません。
供給件数という地盤が十分にできている会社ならば、〇〇ガスのプロショップのような厳しいノルマがあるわけでもなかったので、現状の安定性はトップクラスだと思いました。
新築物件はZEHやオール電化などが多いため供給物件が減る傾向にある
ZEHはZeroEnergyHouse(ゼロエネルギーハウス)の頭文字を取った略称で、太陽光発電+エネファーム(エコキュート)+蓄電池などを使うことで差し引きエネルギーを使わないようにするという物件のことです。
二酸化炭素の排出量を抑えることができるため「新築物件はZEHの比率を高める」と表明しているハウスメーカーも多いです。
老朽化した物件の建て替えの際に入居者が高齢化していることから火を使わない物件の方が安心ということでオール電化にする。
といった「そもそもガスを使わない」物件が増えていくため、従来のガスを供給するという点では先細りの傾向にあると思います。
多角化または専門性を高めることによって差別化する
一方で、現状はお客さんの数は多く、接する機会も多いという十分な基盤があります。
まだ動ける体力がある内に多角化して従業員に十分な教育をして売上と収益を増やし、様々な作業を自動化することでコストを圧縮する。
または、災害に強いという強みを活かして避難所や需要が増えている施設に対して災害用発電機などの設備提案を行うかのどちらかになってくると思います。
個人的に進んで欲しいのは後者の設備提案を中心とした自動化による業務効率化です。
多角化はしても教育に「十分な」という文字がなさそうなんですよね。
もちろん、会社の方針には逆らえないので変化についていくための努力や勉強をする必要が出てくると思います。
まとめ
LPガス会社の組織構成と勤務実態、LPガス会社の業務内容、LPガス会社の将来性と順番にご紹介してきました。
LPガス会社に勤めた経験を元にできるだけ正直に紹介したつもりです。
なんとなくイメージがつかめたなら幸いです。
最後になりましたが、私の勤めた会社の人たちの人柄についてご紹介しておきます。
だらしない人、いい加減な人、頑張りやな人、と色々な人がいましたが、ほとんどのスタッフがお客さんの安全という点への意識が高く、根っこの部分が優しい人が多かったように思います。
ガスというインフラを取り扱っているからでしょうか。
広告関係や金融関連の営業とは違った穏やかさがありました。
会社の方針が大きく変化したとしても、この部分は変わらないでいて欲しいです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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ボンベワンのとある一日
こちらは本編に関連しつつも内容には直接関係しないエピソードのようなものです。
新聞についている四コママンガ的なものと思っておいて下さい。
二種販に合格したボンベワンは、仕事終わりに上司から話があるということで呼び出されました。
これからもがんばるぞー
こういった流れで会議室に移動すると、中から声が聞こえてきた。
これがボンベワンにとって新たな業務がやってくるきっかけとはこの時点では思っていなかった。
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