新電力を販売するメリットとデメリットは分かった、何となく低圧や高圧の違いも分かった。
じゃあ、実際どうすれば契約件数が増えるんだろうか、という疑問が湧いてきたのではないでしょうか。
この記事はLPガス会社が新電力の契約件数を増やすための手順、主に社内向けの内容です。
自分が経験したことをベースにしていますので、電力小売事業者ではなく、代理店の担当者としての立場で上手くいった方法を書きます。
お客さんへのアピールは別記事でご紹介しているので、こちらをご確認下さい。
契約を増加させるための方法を大まかに分けると準備、教育、実行という段階に分かれます。
PDCA(計画、実行、チェック、行動)のチェックがないんじゃね?
と思うかもしれませんが、教育、実行それぞれの工程の中にチェックして見直しをするという内容を組み込んでいます。
並行して進めなければ、スピードが一気に落ちてしまいますので、大枠を作って進みながら改善していくのがレベルアップの近道です。
記事のもくじ
準備する
準備段階でもっとも重要なのは、担当者を決めること。
立場のある人間が担当者になるのが一番なのですが、役職などがない人間を担当者にする場合は、上長が担当者に権限を与えて担当者がやりやすい環境を整えるようにしましょう。
チームでやってもいいですが、チーム内でしっかりと認識を共通させておかないと「〇〇はこう言ってた」「××はこう言ってた」「どっちが正しいねん!」となります。
核になる部分は少数で固めておいて、やり方が間違っていたり現場に沿わないのであれば柔軟に変更していくのがいいでしょう。
担当者の職務
- 担当者の主な職務は
- 受け皿を用意する
- 社内への教育をする
- 結果をまとめて報告
- スタッフのモチベーションを高める
- パートナーとの折衝
となります。
他の職務と兼業でも構いませんが、導入部分から安定するまではやらないといけないことのボリュームが大きいので、安定するまでは周囲のフォローが必要です。
受け皿を用意する
社外からの反響を受け止めるための受け皿、社内からの反響を受け止めるための受け皿の双方が必要です。
社外からの反響を受け止めるための受け皿
電力小売事業者であればホームページの中に特設ページやQ&A、シミュレーションサイト、申込フォームなどが必要です。
代理店であれば、小売り事業者がシミュレーションサイトや申し込みフォームなどを用意してくれるはずなので、最低限はあります。
ただ、ホームページに特設ページを作っておく方が何かと有利です。
社内からの反響を受け止めるための受け皿
新しいことを始めた時は、始める前に様々な疑問が生まれますし、行動してみると必ず新たな疑問が生まれます。
担当者の連絡先を周知する、社内向けの掲示板やQ&Aなどを作って共有するなど、質問しやすい状況を作りましょう。
マニュアルをつくる
お客さんへの案内方法や問い合わせに対しての回答など、電話用のマニュアルと、セールストーク例、伝えないといけないポイントなど対面案内用マニュアルの2種類を作りましょう。
ここに記載するのは実務的な内容なので、案内する際のルールなどの必須事項以外はできるだけ実際のシチュエーションに沿った内容で、表現も口語を用いる方がイメージがつきやすいようです。
マニュアルと書いていますが、初期段階は最低限必要な内容を記載して、自分やチームメンバーからの意見を聞いて「たぶん大丈夫」という回答をもらえたならOKです。
そのため、「この通りやってね」ではなく、「こんな感じでやってみて」と伝えましょう。
雑な仕事に見えるかもしれませんが、完璧なマニュアルを作っていたら動くのが遅くなります。
スタッフが100人いれば100人それぞれの前提条件があるのですから、不明点も100通りあります。
思いつかない不明点に悩むのは時間の無駄です。
さっさと共有してしまった方が結果的にいいものができます。
また、すでに誰かが作ったマニュアルが存在している場合は、そちらをベースに現場に沿っていない部分を改修して使いましょう。
営業ツールをつくる
チラシ、DM、営業ツールなど、お客さんに対して伝える手助けになる販促物を作りましょう。
代理店であったとしても、会社を出れば消費者です。
自分が考える「こういった条件だったら切り替えるかな」ということを客観的に考えて、「この条件を提示すれば獲得できる」と変換します。
この条件を提示するために必要な情報を取りまとめてデザイナーへ伝えるといった手順で作ります。
アプローチする対象に合わせて掲載する内容を変えたり、見た目の印象を変えて契約件数の変動、対面しているスタッフからの反応を見ながら自社のお客さんに最も合った内容に作り変えていくのがいいでしょう。
担当者はマニュアルや営業ツールの元をどうやって手に入れるの?
まずは担当者が率先して契約を獲得したり、小売事業者の担当へ質問する、競合のホームページを閲覧して情報収集するなどして知識を蓄えます。
行動する過程の中で調べたことやひっかかった部分、疑問に思ったことをメモにまとめておいて、その疑問やひっかかった部分に応えていく形で資料を作成していきます。
もちろん、担当者やチームメンバーの理解力とスタッフの理解力に差異があるはずなので、「これで大丈夫」と思うラインは異なります。
入ってきたばかりのスタッフが、この通りにやれば契約が獲得できるようなマニュアルになるまでブラッシュアップを続けましょう。
教育する
何か新しいことを始める時は、誰しも「見たことある」「知っている」「理解している」「できる」という過程を通ります。
準備ができてマニュアルを共有したとしても、しっかりと読み込んで理解してくれるスタッフの割合はレアです。
教育することで「見たことがない」「見たことはある」スタッフを「知っている」「理解している」段階へ引き上げることが目的です。
勉強会の実施
共有したマニュアルを元にスタッフの不明点を洗い出していくことは主要な目的のひとつなのですが、マニュアルを読み上げるだけの勉強会はNGです。
読み込んでくれている人にとっては眠たい時間になりますし、実務的な内容のみを書いていて面白くないので頭に入りません。
勉強会で伝えて効果があった3つの内容
担当者にとっても、スタッフにとっても実のある時間にするために3つのことを伝えるのが効果的です。
- 「なぜ契約を獲得する必要があるのか」といった目的の共有
- 「案内する対象を明確にする」といったターゲットの明確化
- 獲得すると自分にとってプラスになるといったスタッフのメリット
スタッフが能動的に動くかどうかは獲得件数に大きく影響するため、上記の3点は必ず伝えましょう。
「なぜやる必要があるのか」という理由付けは意味のないことをしたくない、自分に関係のないことをしたくないという他人事から自分事にしてもらうため。
ターゲットの明確化はあくまでもお客さんにとっていいものを勧めているというスタッフの心的リスクの軽減のため。
インセンティブでも人事考課でも構いませんが、スタッフのメリットは分かりやすいですよね。
上長を通じて上層部へ働き掛けてもらいましょう。
結果をまとめる
スタッフ別、部署別、全体などの数字を1カ月に1回などのスパンで定期的にまとめて数字の変化を見つめましょう。
後で加工しやすいようにエクセルなどに入れておくといいと思います。
スタートダッシュはしたけど、半ばからサボり始める人、突出はしていないけどコンスタントに獲得する人、ずっとトップを走り続ける人などスタッフの個性も見えて面白いですよ。
成果が出ている人と成果が出ていない人を比べる
同じ施策をやっていたとしてもスタッフのやり方やモチベーションによって結果は必ず変わります。
成果がコンスタントに出ている人や部署には必ず独自の工夫があります。
地域特性もあるので、一概には言えませんが、案内する件数が多い、案内の仕方がとても気軽、お客さんの負担をできる限り削っているといったところですね。
マニュアルをブラッシュアップする
実際にやってみて、こういった場合はどうするの?などの質問が集まってくるようになります。
質問に対しての回答をメモしておいて、よくある質問や掲示板へ共有。
重大な問題が見つかった場合や質問内容がある程度貯まったら、新しいマニュアルにします。
マニュアルを新しくした場合は、速やかに全員へ共有して告知。
固まるまで5、6回は作り直した記憶があります。
実行する
実際に案内をしていく中で様々な問題が出てきます。
担当者が率先して解決しましょう。
動けば動いただけ、スタッフからの協力が得られるようになります。
声掛けをする
電話で案内している際に困っていたり、返答に詰まっている部分を見かけたなら、必ず「さっきはどういったやりとりだったの?」と詳細を聞きましょう。
自分が作ったマニュアルにまずい部分があったのかもしれませんし、新たに組み込んだ方がいい部分があるのかもしれません。
自分の作ったマニュアルは完璧だ!と独りよがりにならないように、現場からのフィードバックをもらいましょう。
また、結果が出ているスタッフ、結果が出ていないスタッフからもそれぞれヒアリングしましょう。
結果が出ているスタッフには「なぜ上手くいっているのか」「もっとよくするためにはどうすればいいと思うか」といった抽象的な質問。
結果が出ていないスタッフには「何件くらい案内してみたのか」「どういった断りがあったのか」といった具体的な質問。
など質問の仕方を工夫すれば良い機会になります。
結果を公表してモチベーションを保つ
まとめた数字を使ってグラフや表でスタッフ別、部署別、全体の獲得数を作成、「〇〇さんがトップ!」「〇〇さんが初獲得!」といった情報や、どういった工夫をしているかなどのヒアリングした内容を月に1
度の頻度で共有していました。
常に数字の変化を見ることで「契約の獲得」を意識してもらうことはモチベーションに関わってきます。
レポート作成のポイントは、客観的な情報を元にして主観をできる限り排除すること。
称賛はOKですが、つるし上げをすると逆効果なので注意して下さい。
指導はそれぞれの部署の上長にやってもらいましょう。
成果に応える
頑張ったのに評価されないとモチベーションの低下につながります。
獲得したら全てスタッフに返ってくる、次点で導入時点でこれくらいは取って欲しいという基準を設けて、基準以上を獲得すれば頑張った人に返ってくるシステムにしたかったのですが、これは通りませんでした。
人事考課へのプラス評価と社内表彰があったので、これでもいいかもしれませんが絶対評価としての数字を用意して達成した際のプラス、達成しなかった際のマイナスを明確にしておいた方がモチベーションにいい影響を与えると思っています。
実行しやすい環境を整える
よくある質問の内容が充実して、分かりやすいマニュアルができあがれば、担当者の業務のボリュームは減ってきます。
事業者から支給される申込書やチラシを切らさないように枚数管理をする、チラシの内容をヒアリングして刷新する、頑張っている担当者に声掛けをするなどの縁の下の力持ち的な行動が主な職務になるでしょう。
代理店の場合は小売事業者からのフィードバックの窓口にもなるので、良いフィードバックはスタッフへ共有、トラブル対応は率先して処理した上で、やんわりとスタッフへ共有しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
十分な教育時間を取って、営業ツールを用意すれば、成果の大きな部分を占めるのはモチベーションです。
そのため、管理者あるいはリーダーはどうすればモチベーションを上げることができるのかを考えましょう。
一番効果的な方法?
自分が率先して動いて契約件数トップになることです。
もし実働部隊として動ける立場じゃない場合は、
- 声掛けをする
- 面倒ごとを引き受ける
- サボっている基準・頑張っている基準を〇件とか、リストの〇%などの絶対評価でつくる
- そして頑張っている基準を超える成果が出た場合は、成果が出た分だけ報いるような仕組みを設定してあげる
- チーム対抗戦などの社内企画を考えて実行する
といった制度面からサポートすれば、モチベーションの維持や上昇につながることでしょう。
もちろん、インセンティブ獲得のために売りつけるなんてことが起きてはいけないので、獲得する対象についての教育はきちんとしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ボンベワンのとある一日
こちらは本編に関連しつつも内容には直接関係しないエピソードのようなものです。
新聞についている四コママンガ的なものと思っておいて下さい。
でんきニャンに新電力について教えてもらったボンベワン。
何となく売るイメージがついたので他社の成功事例を聞かせてもらうことになりました。
前のお話はこちら
モチベーション管理が一番大事って言っても、先輩ばっかりだからな・・・
制度について物申せる立場でもないし。
とりあえず全力でやってみます。
素直で頑張り屋なボンベワン、間接的にサポートしようとボンベ先輩がボンベ社長と話し合っていた。
もし足を引っ張るようなスタッフがいたら、君がフォローするかワシに直接伝えてくれ。
負担がかかっているでしょうし、見える範囲であればそれとなくフォローします。
いい会社ですね。
次のお話はこちら