2016年に電力の小売事業が全面自由化されて、消費者が自由に電力会社を選ぶことができるようになりました。
今までは10の事業者だったのが、2020年6月5日時点で655事業者(資源エネルギー庁より)となり、選択肢が一気に増えたことになります。
各事業者がリアルで、ネットで競争を繰り広げており、ガス会社も大手は事業者として参入している企業が73社ほどありました。
また、電力小売事業者の代理店として参入する場合もあります。
事業者として参入する場合は専門の部署が作られていることかと思いますので、ノウハウも溜まっていることと思います。
今回の記事は「なんとなくやることを増やされた」と感じているであろう代理店として働くガス会社の社員に向けてのものです。
通常の業務に加えて勧める内容増えるし、あんまりよく分からんし、めんどくさいと思っていても大丈夫。
この記事を読めば、
- ガス会社が新電力を販売するメリット
- ガス会社が新電力を販売するデメリット
が明確になります。
いきなり
「ウチも新電力を販売することにした!」
「新電力の販売を強化する!」
と言われても対応しやすくなると思います。
記事のもくじ
ガス会社が新電力を販売するメリット
ガス会社が新電力を販売するメリットはお客さん、会社、スタッフにとってそれぞれのメリットがあります。
順番に見ていきましょう。
お客さんにとってのメリット
お客さんにとってのメリットは、直接的または間接的に「安くなる」「お得になる」といったものです。
新電力の小売事業者にはガス会社もありますが、石油元売りなどのエネルギー会社、KDDI(au)やソフトバンクなどの通信会社が挙げられます。
そのため、自社のでんきに入るとガソリン料金が安くなったり(ENEOSでんき)、電気料金のポイント還元がされたり(auでんき)、ポイントの付与量(楽天でんき)が上がったりします。
電気料金が安くなる
関西エリアで供給している新電力小売事業のシェア大手10社の電気料金をを関西電力と比べたところ、同料金の会社はありましたが、関西電力を超える金額はありませんでした。
代理店がホワイトラベル(自社名+でんき)のような形態で電気を販売していたとしても、超える金額を設定していることはほとんどないため、地域の電力会社を利用しているお客さんであれば金額の多寡はあっても安くなるでしょう。
もちろん、お住いの地域によってセット販売前提の料金体系にしている可能性もある(某ガス会社のAMAZONプライム会費無料のプランだと電気料金が関西電力が高い)ので、地域の電力会社の料金表と大手シェアの何社か、そして自社の料金表を作成して内容を把握しておきましょう。
セット販売による恩恵を受けることができる
人によってはこちらの方が大きなメリットが享受できる場合もあります。
LPガス会社が電気を販売する場合でも独自のセットプランを用意して具体的なメリットを提示しましょう。
キャンペーンによる恩恵を受けることができる
インセンティブと呼ばれるものです。
〇月中に申し込んだら5,000円分のAMAZONギフトカードプレゼントとか、2,000円分のQUOカードプレゼントとか直接的なものや、プライム会員の会費無料とか間接的なものに至るまで色々あります。
私もキャンペーン中に申し込んだクチなんですが、2,000円分のQUOカードが届きませんでした。
大手でも漏れってあるんですね・・・。
某大手企業への印象は最悪なので、インセンティブを設定したら必ずお届けして下さい。
会社にとってのメリット
会社にとってのメリットは、ホワイトラベル(自社のでんき名目)の場合とそうでない場合で異なります。
ホワイトラベルの場合は既存顧客の囲い込みができること、供給外のお客さんを獲得できる可能性があること。
共通のメリットとしては、小売事業者から手数料が入ること、参入しやすいこと、教育しやすいことなどが挙げられます。
ポイント
自分が選択する場合でも、お客さんに勧める場合でも、会社にとってもメリットはある。
お客さんに勧める場合は、競合になりそうな新電力会社を調べておこう。
既存顧客の囲い込みができること
お客さんのガスの使用量だけでなく電気料金についても把握することができるようになるため、お客さんのライフスタイルがより浮き彫りになります。
情報をベースにそれとなーく担当者から深堀りしてもらい、より適した商材を提案する下地にすることができます。
また、ガスとでんきを販売することで、お客さんからエネルギー会社と思ってもらえます。
ガス機器だけでなく電化製品についての相談をもらえる可能性があります。
もっとも、電化製品についても修理ができたり、詳しくなる必要は出てきます。
供給外のお客さんを獲得する可能性があること
関西エリア、中部エリア、関東エリアなどのエリアの指定はあるかもしれませんが、自社の供給団地ほどの小さな枠組みではないため無数の顧客がいます。
拡大を目指すのであれば新規向けに対しての販促物で供給団地の近くにある供給外の顧客へのポスティングをしてもいいかもしれません。
獲得した後の仕組みにもよりますが、転換は難しくてもリフォームや修理、物販などの別案件の入口になる可能性は十分にあります。
もちろん、既存顧客に比べると反応は鈍くなるのであらかじめ想定しておきましょう。
小売事業者から手数料がはいること
1件獲得するごとに〇円、獲得した後も使用量に応じて〇~△%もらえます。
金額およびもらえるパーセンテージは契約次第ですが、獲得件数が多ければ多いほど金額は上がる傾向にあるようです。
獲得1件あたり7,000円もらえる代理店もあるそうな。
参入しやすいこと
電力小売事業者は代理店の条件として、地域に根差しておりある程度の顧客基盤がある相手を求めているのでガス会社はぴったりの存在です。
そのため、小売事業者としてはLPガス会社のパートナーを常に求めている…はず。
電気料金や獲得インセンティブなど条件面を比べながらパートナーを探してみても良いと思います。
教育しやすいこと
ガスも電気もエネルギーというジャンルが一緒であるため既存顧客にとっては受け入れやすく、多角化するための商材としては扱いやすいです。
また、電気にも低圧、高圧といった種類があって異業種であればややこしく感じるかもしれませんが、ガス業界であれば二種販の勉強などで下地があります。
入居者を登録する流れと電気の契約獲得のオペレーションも似ている部分があるため、業界が近いという点で親和性は高いのだと思います。
ポイント
ガス会社にとって新電力の業界は親和性が高いため、参入しやすくメリットも豊富。
顧客分析ができるならば、更なる発展が見込める。
スタッフにとってのメリット
スタッフにとってのメリットはスキルが上がって自分の仕事がやりやすくなること、営業ではないライン部門(利益を出さない部門)が利益を出せるようになることです。
自分の仕事がやりやすくなること
お客さんへのメリットで紹介したように、電気料金自体が安くなったり、セット割引で安くなる可能性があるため、お客さんによっては良い提案になる場合があります。
良い提案であれば「自分にとっていい話を持ってきてくれる担当者」あるいは「親身になってくれる担当者」というイメージを持ってもらうことができるため、電気の契約が取れなかったとしても何かの機会に思い出してもらえる可能性が高まります。
良い提案にするためには、まずはお客さんがどの電力会社と契約しているのかを確認しましょう。
新電力を契約している場合は能動的に動いている方が多いので、「分からない」とかの場合は大抵関西電力などの地域の電力会社です。
「興味ない」だったら軽く伝えてチラシか資料を置いてその場は引いて、後日見てもらえたかを確認する程度でOKです。
営業の提案の幅が広がること
営業という職種であるならば、幅広い提案ができる方がいいですよね。
お客さんへ勧めて悪感情を持たれるリスクが低い商材は歓迎すべきです。
ガスと電気の両方が詳しくなればエネファームや太陽光発電、蓄電池のような電気関連の商材への抵抗感も少なくなります。
事務が提案しやすいこと
開栓や問い合わせなどの電話の窓口になることが多い事務職は外回りに比べて倍以上の人数と接しています。
そのため、案内できる機会も倍以上、特に開栓のタイミングは入居者とのファーストコンタクトなので、取りやすい傾向があります。
勤めていた時の年間トップも事務職でした。
もちろん、本人の努力によるものではありますが、本人曰く「数打ってるからねー」とのことでした。
営業のセリフですよ。それ。
お客さんに「ほんまに得なん?」と言われたら
最初にも書きましたが、2020年6月時点で小売事業者だけでも655社入っています。
そのため、全部を比べるのはほとんど不可能ですし、車の使用不使用、契約している携帯電話会社がそれぞれなどライフスタイルが異なるため「どこが得!」といった明確なことは言えません。
お客さんのライフスタイルに合わせて提案できるのが一番ですが、自社の契約にならないのであれば骨折り損になる可能性もあります。
そのため、地域の電力会社と契約しているお客さんであれば勧める。
それ以外の新電力会社と契約しているならば、知ってれば答えて、分からなければ分かりません、あるいは調べてみます。と伝えた方がいいと思います。
ポイント
新電力はお客さんにとってのリスクが低いので数が打てる商材。
営業にとっても自分の幅が広がるので、地域の電力会社と契約しているお客さんには積極的に勧めるべき。
次はデメリットです。
お客さんは他の新電力へ申し込みをしている場合はデメリットになる可能性がありますが、地域の電力会社と契約しているお客さん以外は勧める対象にしていないので、お客さんにとってのデメリットは”なし”とします。
ガス会社が新電力を販売するデメリット
デメリットは新しいことを始めるための準備、管理のために人的リソースとコストがかかることです。
新しい事業のひとつになるので、当たり前と言えば当たり前なんですが、会社の資産を使うのでデメリットとして記載します。
具体的な手法については別記事で解説しているので、こちらをご確認ください。
LPガス会社が知っておきたい新電力!契約増加ための3ステップ
それでは、順番に見ていきましょう。
準備
準備に必要なのは、主に人的リソースの部分ですね。
特に負荷がかかる担当リーダーやスタッフのモチベーション低下に留意する必要があります。
新たに覚えることが増える
こちらは担当リーダーはもちろんですが各スタッフにとっても新しいことを覚えて実践するのでストレスが増えます。
リーダーは専任ならいいですが、他の職務と兼任であることが多いでしょうからフォローしてあげましょう。
販促のための教育をする必要がある
新しいことなので全員が試行錯誤するのであればいいのですが、試行錯誤するのは2割くらいで「こうやって動いてね」と伝えない限り8割以上は能動的に動きません。
そのため、グループごと個別に教育をしましょう。
教育するために次のマニュアルなどが必要になります。
マニュアルを作成してトレーニングをする
マニュアルが入門書、入門書を見ながらやってもらって個別にアドバイスという流れです。
リーダーが率先して動いていれば、スタッフは協力してくれます。
管理
必要なのは顧客リストの管理とモチベーションの管理です。
特にモチベーションに関しては獲得に大きな影響があるので、それぞれの社風に合ったやり方で向上、悪くても維持を目指しましょう。
リストの管理
リストの管理はコンプライアンスにも関わるので、厳重に管理する必要があります。
活用方法としては、会社で設定したお客さんへのプレゼント(インセンティブ)をお届けすること。
どういった方が申し込んでくれたのか、どういった経路で申し込んでくれたのかなどの顧客分析、スタッフの誰が獲得したのかを分析するなどが挙げられます。
企画的な部分にはなりますが、電気も契約してくれている方を対象にキャンペーンをするのもいいと思います。
申し込みの経路が分かっていれば紙とWebのどちらが効果的かも図れるのでコスパのいい販促ができると思います。
モチベーションの維持
頑張った人、頑張っているけど上手くいかない人、頑張っていない人など色々います。
客観的かつ公正に数字を共有することと、それぞれの性格に合わせたフォローをすると上手くいきます。
コスト
こちらはお金の話ですね。
社内で作る場合は人的リソースに入りますが、専門家を雇うのはそれなりの規模の会社であると思うので外部パートナーに頼む前提で話を進めます。
販促ツール
ホームページに新しいページを追加あるいはリニューアルする。
紙の場合は提案書やチラシ、パンフレットを作ったりしてスタッフの理解を深めたり提案を手助けするものがあった方が上手くいきます。
低圧の場合は提案書を作るほどではないので、チラシや小冊子などの手軽なものがいいと思います。
デザイン会社などの費用は制作までに何日かかるかといった作業日数×単価で金額が出ます。
純粋に金額で選ぶよりも、内容を理解しているデザイン会社を選びましょう。
理解しているデザイン会社の方が出来たものを担当者がチェックして修正といった回数が減るので、担当者の時間が軽減できて結果的に安くなることが多いためです。
ポイント
教育するために人的リソースが、制作物をやホームページなどのツールに対して資金的コストがかかる。
立ち上げの時は特にしんどい。
獲得するためにはモチベーションを上げることが一番大切なので、リーダーが先頭になって切り開ける環境を作ってあげよう。
まとめ
お客さん、スタッフ、会社といったそれぞれの立場でのメリットとデメリットをご紹介しました。
成果を出すためには知識、ツール、仕組みが必要です。
知識の拡充は
新電力とは?新電力販売でよくある質問やお客さんが抱いている不安を知ろう
LPガス会社が知ってておきたい新電力!低圧・高圧・特別高圧の違い
の記事で、
ツールや仕組みについては下の二つの記事を参考にしてみて下さい。
マニュアルの作成や営業ツールの制作であれば、お手伝いできますのでお気軽にご相談下さい。
最後に
あなたがお勤めのLPガス会社は専門性を高めていくと思いますか?
それとも扱う商材が増えていくと思いますか?
ホームページやアプリなどで集客やセールスが半自動化、事務作業は自動応答などのナビダイヤルと番号プッシュで受付、AIが発達してチャットで受け答えするなどが一般的になってしまえば、人間がやらないといけない仕事は少なくなります。
そういった世の中がきた時に求められるのは、会社への利益を生み出す人か、替えが効かない人のどちらかです。
どんな商材やサービスであっても結果を出して利益を生み出すか、あるいは保安や施工などのスペシャリストになるかが求められるのではないでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございました。
ボンベワンのとある一日
こちらは本編に関連しつつも内容には直接関係しないエピソードのようなものです。
新聞についている四コママンガ的なものと思っておいて下さい。
前の話はこちら
紹介したい相手がいるということで、ボンベ先輩に連れられて会議室にやってきたボンベワン。
会議室に入ると、そこにはボンベ社長と初対面の相手が話していた。
お客さんにとっても弊社にとってもいいお話ですね。
ぜひ話を前向きに進めましょう。
お、来たようです。
社長、こちらの方は・・・?
私はねこねこでんきのでんきニャンと申します。
ボンベ株式会社のボンベワンです。
君が中心になってやりなさい。
任せたよ。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
全く流れが分からない中で何かのリーダーになってしまったボンベワン。
ところで、任せたって言われたものの何からすればいいんだろ?
社長命令で担当になってしまったボンベワンの明日はどっちだ。
次の話はこちら