自社でチラシを制作しているガス会社は多いのではないでしょうか。
デザイン会社が専属で作っている場合もありますが、個人的には自社で何パターンも作るのがベストだと思っています。
なぜなら、商品についての専門的な知識があり、お客さんの事を一番分かっているのは現場の人だからです。
ただ、デザイン会社は情報を伝えやすくするためのプロです。
いかに商品についての専門的な知識があったとしても、チラシを作るテクニックを知らなければ作るための時間がかかってしまいますし、反響の出るチラシができなければデザイン会社に外注した方が安くつく可能性もあります。
そんな時にチラシを作る時のコツを知っていれば、いいものができますし、同じ時間でも作るスピードが上がりますよね。
今回はビルトインコンロを題材にお客さんから問い合わせがもらえるアクションチラシを作ってみましょう。
記事のもくじ
チラシとアクションチラシは作り方が違う
チラシを作る工程と料理を作る工程はとてもよく似ています。
どちらも材料を集め、レシピに従って、組み立てます。
自分で食べる場合はやっつけ料理でも構いませんが、相手がいる場合はそうはいきません。
喜んでもらおうと思えば、辛いのが好き、甘めの味付けが好きなどといった相手の嗜好や、ダイエット中だからローカロリーのものを、疲れて帰ってきているから濃い目の味付けといった相手の状況を考えて作りますよね?
行動を促すチラシをつくる場合も同様です。
お客さんの感情を揺さぶって反応してもらうのですから、様々なことを考えてつくらなければなりません。
組み立てる部分をデザインと思われがちですが、デザインは組み立てる前段階から始まっています。
アクションチラシをつくる手順
具体的な手順は全部で11ステップ。
- 何を売るのかを考える
- 誰に売るのかを考える
- 情報収集をする
- 現場の人間と相談する
- どうやって配布するかを考える
- コンセプトを決める
- シナリオをつくる
- 構成を考えて設計図をつくる
- 設計図を元に組み立てる
- 装飾する
- 印刷する
順番にみていきましょう。
1.何を売るのかを考える
上位機種からべーシックモデルまで幅広いビルトインコンロ。
最上位機種でも構いませんし、ベーシックモデルでも構いません。
今回はテストケースなので、売れ筋でリンナイのミドルクラス機種であるリッセを元に考えてみましょう。
2.誰に売るのかを考える
もちろん「お客さん」に売るのですが、この「誰に?」の部分を絞り込んでいきましょう。
なぜ絞り込むのか?という疑問が湧くかもしれませんが、「全員に」販売しようと思った場合はカタログのようなチラシしか作れないからです。
当たり前と言われるかもしれませんが、ビルトインコンロを買って5年以内のお客さんにアピールしても売れないでしょうし、現在デリシアなどの最上位機種を使っているお客さんにリッセを勧めても売れにくいですよね?
消去法で条件を狭めていって、「こういったお客さんだったら売れるでしょ?」と思えるような理想のお客さん像を完成させましょう。
もし、理想のお客さん像に似た感じのお客さんがいるなら最高です。
カタログはダメなの?
カタログは汎用的に使えるため、絶対に必要なチラシの種類のひとつです。
ただ、汎用的なものは専門的(アクションチラシ)な機能が持てません。
汎用的なチラシは一般人が読んでもあんまり意味が分かりません。
専門的な知識を持った営業マンが使えば強力なツールになります。
今回はアクションチラシを作るためにカタログを除外していますが、誤解なきようお願いします。
お客さん像のイメージを固める
そのお客さんの年齢や性別、家族構成やご自宅の規模、生活サイクルなどを誰が見てもイメージできるような情報を書き出しましょう。
本記事で販売する対象
築30年の戸建に住んでいる50代後半の主婦、高校生と中学生の子供がいて、現在使っているビルトインコンロはマイトーン。
使用歴は15年。
子どものお弁当も作っており、料理好き。
旦那さんは会社員で年収600万程度。
といった具合です。
「50代の主婦」というよりイメージが湧きますよね。
こういった具体的なイメージが湧くお客さん像のことをペルソナと言います。
ここまで固めていなかったとしても、
- ビルトインコンロの使用歴が10年以上かつミドルクラス以下のビルトインコンロを使っているお客さん
- 築20年以上の戸建てに住んでおりキッチンリフォームを一緒に提案できるお客さん
- レンジフードを付けていないお客さん
といった風にできるだけ商品やサービスのウリがお客さんにとって喜ばれる可能性が高い条件を組み立ててください。
この絞り込んだ条件がターゲットと呼ばれます。
チラシの反応が出るか出ないかは商品選定とターゲットの設定が適切か否かで8割決まります。
3.情報収集する
商品が決まって、ターゲットも定まったならば、商品情報と画像など素材の収集、ターゲットの考え方や行動についての情報収集を始めます。
ここでは客観的な情報を集めると同時に、「お客さんがどういった感情を抱くのかを想像する」ことが大切です。
商品情報
今回はマイトーンを15年使っているお客さんにリッセを販売するため、マイトーンの情報とリッセの情報を中心に集めていきます。
具体的には、商品の特徴、価格、自社のリースプラン、商品の機能など。
商品の機能について
- 15年前(2005年モデル)から進化した部分、進化したことで便利になった部分
- 便利になったことでどういったことが達成できるようになったのか
- マイトーンとリッセの違い
などの比較できる情報をまずは集めましょう。
2005年以前のモデルであるならばSiセンサーが付いていない可能性もあるため、安全性が上がっていますし、ココットプレートなどのグリル内の調理器具がつくようになったのは最近ですから、掃除が楽になっていますよね。
関連する商品やサービスについても集めておく
セット販売しやすいレンジフードや水栓の商品情報や、築30年であることからキッチンのリフォームサービスについての情報も集めておくとよいでしょう。
お客さん情報
担当している営業と相談しながらどういう風にキッチン周りを使っているのか、キッチン周りの掃除の頻度やどのくらい時間をかけているのか、食事を作る時間やよく作る料理などの情報を集めていきましょう。
会社に年齢や家族構成など理想のお客さん像に近い条件の女性がいる場合は、直接ヒアリングしてもいいと思います。
情報が集まったら、お客さんがどういった悩みや日々の小さな不満を抱いているのかを想像しましょう。
- 「最近火が消えることが多くなってきた」
- 「キッチン周りの掃除に時間が取られる」
- 「こまめに掃除しているのに採れない汚れがついてきた」
- 「魚料理が好きだけどグリルの掃除が面倒で頻度が低い」
- 「油ものをよく作るけど目が離せなくて大変」
などなど、不満についても営業やスタッフから直接聞いた方がいい案が出ることが多いです。
再度何を売るのかを考える
「ドリルを売るなら穴を売れ」というベストセラーになった本がありましたが、まさにその通りです。
お客さんはリッセが欲しいのではなく、リッセを買うこと得られる何かが欲しいんです。
リッセにあってマイトーンにない機能などを考えていくと、お客さんにとってのメリットが分かります。
そして、お客さんがそのメリットで得られる喜ばしい未来のことをベネフィットといいます。
ベネフィットがなければお客さんの心は動きません。
4.現場の人間に確認する
情報収集したら、営業や施工の担当にこういった情報についてどう思うかを確認しましょう。
営業の場合は成績が上がっているスタッフに、どうやって売っているのか、その際のセールストークでお客さんに響いたであろうフレーズやどういった会話の時にお客さんが話に乗ってきたかなどを直接ヒアリングしていきます。
集めた情報使えるものと使えないものを仕分けていきます。
5.どうやって配布するのかを決定する
営業がお客さんと面と向かって説明する場合に必要な情報と、会えなくてポスティングする場合に必要な情報は違います。
説明できる場合はチラシに掲載する情報は営業のトークを中心にして補足するような内容(グラフや比較表が載ったもの)がいいでしょうし、ポスティングする場合は営業のトークがないため、セールストークが掲載されたものでなければお客さんの興味がわきません。
そのため、会えた時に使うチラシと会えなかった時に使うチラシの二種類、一種類だけの場合は会えなかった時に使うチラシを作るのがいいと思います。
この際に何部刷るのか、そしてチラシのサイズも決めておきましょう。
ターゲットが定まっているならば、枚数の計算は簡単かと思います。
反応の経路も決めておく
電話での問い合わせをメインとするのか、担当者へ直接連絡が欲しいのか、あるいはホームページなどからの問い合わせを集めることを目的にするのかなどです。
もし、ホームページやランディングページも用意するのであれば、チラシのようにサイズの縛りを受けないため十分な情報を掲載することができます。
今回は会えなかった時、つまりポスティングでA4サイズ両面カラーを2,000部という前提でチラシを作ります。
6.コンセプトを決める
集まった情報をまとめることで、最もお客さんが悩んでいるであろうこと、興味を示してくれるであろう商品のウリを元に、「お客さんにどう思って欲しいか」を決めます。
「注意」
「怖い」
「エコ」
といったように、色がイメージに与える影響は大きく、文字の形によっても印象が大きく変わります。
画像は小塚明朝と小塚ゴシックというフォントです。
フォントは数百を超える種類があって、温かみを感じる手書き風文字やロゴっぽく使えるフォントなどもありますが、基本的にはゴシックか明朝で作りましょう。
「どのような印象を与えたいか」ということを考えてコンセプトを決めましょう。
チラシのスペース配分や見た時に与える印象は、コンセプトに沿って進めるため、最も大切な要素となります。
今回のコンセプトは「リッセを買うと家事が楽になる」にしましょう。
7.シナリオをつくる
チラシのシナリオを作ります。
セールストークを文字に起こしていく感じでもOKです。
シナリオは問題提起、解決方法、証拠、共感、オファー、クロージング、メタ情報の7つで構成されます。
今回の場合だと、
問題提起
「こういったことでお悩みではありませんか?」を具体化した内容です。
「キッチンやコンロの掃除に時間ががかかっていませんか?」とかですね。
解決方法
お悩みを解決するための方法を伝えます。
「リッセに買い替えると時間がかからなくなりますよ。」
証拠
なんで楽になるのかの客観的な理由を伝えます。
天板がガラストップで汚れが取れやすく、グリルもココットプレートで汚れがほとんどつきません。
スモークオフで臭いを焼き切る機能とかも嬉しいですよね。
マイトーンとの比較としてガラストップと非ガラストップの違いを載せるのも響く機能です。
共感
買い替えたお客様の生の声を伝えて、「買っても失敗しませんよ」と伝えます。
掃除の時間が短くなった、魚を焼いても臭いがしないとか納得してます。
オファー
リッセを手に入れるための対価についてを伝えます。
メーカー希望小売価格¥220,000のところ、〇円!
リースの場合は月額〇円!など。
クロージング
おまけや特典を伝えます。
スクレーバー(汚れを取るヘラみたいなもの)プレゼント!とか、一緒にレンジフードを購入の場合は取り付け費用を無料!とか、〇日までにお申し込みの場合は××プレゼントとかですね。
メタ情報
会社名、住所、連絡先、担当者などの掲載しないといけない情報です。
7つの要素全てを掲載できるのがベストですが、チラシのサイズによって削る可能性もあります。
商品の認知度が低い場合は共感パートが絶対に必要なのですが、コンロはお客さんがイメージしやすい商材であるため、今回はスペースの都合上削ってもいいかもしれません。
8.構成を考えて設計図をつくる
伝わりやすくなるような表裏の構成を考えることと、感情を揺さぶるシナリオにするためにストーリをコピーライティングによって言い換えます。
お悩みが解決した時に得られる未来をイメージさせる(ベネフィットを理解してもらう)ことができれば、お客さんはチラシの内容に興味を持ってくれるようになります。
全てを均等に配置するのではなく、伝えたい情報の優先順位をサイズに反映してラフ(設計図、完成予想図)を作ります。
表は導入部分、裏面は詳細という構成が一般的です。
チラシラフの表
表面の役割は「自分に関係があることだ!」と思ってもらって詳しく読んでもらえるようにすること。
キャッチコピーとイメージによってベネフィットを直感的に伝えます。
表面だけで連絡がもらえるなら100点ですが、「ほんまかいな?」と思ってもらって裏面に進んでもらえれば十分です。
チラシラフの裏
裏面の役割は表面の内容を補完する内容です。
あらかじめ作ったシナリオが伝わりやすくなっていればOKです。
お客さんが「購入することで失敗するのではないか?」という不安をなくすこと、「また今度」と言わせないためのクロージングで今行動しないといけない気持ちにさせます。
問題提起のコピーライティングの例
「キッチンやコンロの掃除に時間ががかかっていませんか?」の部分を「ウチのグリルはお手入れいらず」とか「まだキッチンの掃除に時間をかけてるの?」とか、「告白!我が家の家族の時間が長い理由」とか「マイトーンに比べてお手入れ時間1/3」といった風に言い換えて、お悩みの核心を突きましょう。
チラシを見る時は目線がZをたどる
チラシは「読まれる」ものではなく、「見られる」ものです。
見た上で自分に関係がある内容であれば読んでもらえます。
キャッチコピーが上部に掲載されているのも、買い替えると手に入るイメージを掲載しているのも「こんな風になりたいな」といった自分が手に入れたい未来を想像させるためです。
9.設計図を元に組み立てる
ラフを見ながら画像とテキストを使って、全く知らない人が見ても伝わるような内容にしていきます。
リンナイさんの場合は、お付き合いがあるなら画像を配布するサイト(サプリネット)から画像がダウンロードできるので、商品の機能などの画像は手に入ると思います。
この時点で意識しないといけないのは、読みやすくすることです。
読みやすくするためには、文字の形(フォント)を統一する※、余白をつくる、固まりごとの配置ルールを均等にする、各要素を整列させる、テキストの字間や行間を工夫するといったところでしょうか。
フォントを統一する
下の画像で違和感を感じますか?
見出しのフォントは小塚ゴシック、説明文は3か所ですが、一か所違うフォントを使っています。
ワードやパワーポイントなどのオフィスソフトで作った場合やホームページなどからコピペで作った場合などに起きがちなミスです。
違和感があると違和感のある場所で止まってしまい、伝えたいことが伝わりません。
役割が違う(チラシの中身と連絡先、見出しと本文など)場所を目立たせるためにフォントを変えるとかはOKです。
余白をつくる
余白をつくらないと読みにくいです。
シンプルな構成でも余白を上手く使えば洗練されたデザインになります。
余白なし
余白あり
この余白はチラシ全体においても、情報のひと固まりごとでも同様です。
情報のひと固まりを要素と呼びます。
情報の固まりごとのルールを明確にする
赤の点線で囲んだ部分が情報のひと固まりですね。
見出しと画像、説明文などが入っているとしたら、画像の大きさや見出し・説明文の文字の大きさは同じ、それぞれがつける余白の広さは同じにしましょう。
各要素を整列させる
補助線を引いてみるとガタガタです。
こちらも読みにくさにつながってしまうため、読んでもらえる可能性が減ってしまいます。
パワーポイントなどでも配置→整列ができますし、イラストレーターなどのグラフィックソフトでは整列パネルがあります。
左右揃え、上下揃え、中央揃えなどどこかに見えない補助線が引けるようなチラシにしましょう。
テキストの字間や行間を工夫する
テキストは字の間や行の間を調整することで読みやすさが大きく変わります。
2行程度であれば行間はさほど感じませんが、複数行に渡る内容である場合は行間を意識することで読みやすさが大きく変わります。
字間をそれぞれ変えています。
好みはあるかもしれませんが、一番下が読みやすいと思いませんか?
行間になると分かりやすいですよね。
読みやすくないと読んでもらえません。
ここまでできたら社内で回覧
「言いたいことが分かるか」「欲しくなるか」「情報に過不足はないか」などの意見を聞きましょう。
一発OKはなかなか難しいと思いましょう。
10.装飾する
コンセプトに沿うようにフォントやサイズを変え、色を使って装飾します。
色が増えると見にくくなるので、使っても3色くらいに抑えましょう。
ベースになる色を70%、メインに使う色を25%、特に強調したい部分に使うアクセントカラーを5%くらいの割合で使うとバランスがいいです。
ベースカラーは淡い色、メインカラーは伝えたいイメージに使う色、アクセントカラーはイメージの補色や目立つ色を使いましょう。
再度社内で見てもらって、OKなら印刷です。
11.印刷する
2,000部刷る場合は、社内印刷よりもネット印刷の方が単価が安いです。
社内印刷の場合はリースであればカラーの単価は1カウントあたり10~20円、つまり両面印刷の場合は1枚20円~40円となります。
しかも普通紙なので裏写りしてきれいな印刷になりません。
一方でネット印刷なら納期は一週間程度かかりますが、紙が選べるのできれいに印刷ができて100部なら18円程度、500部なら5円程度、2,000部なら1枚3円程度で済みます。
何パターンか作ってどのチラシの効果が高いのかを比べてみてもいいかもしれませんね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
どういったお客さんを対象にするかで打ち出すポイントは大きく変わります。
対象になるお客さんごとにチラシを作り分けてアピールできれば、反応率は高くなります。
また、チラシの反響を測定するしくみを作っておくと、今後の参考になります。
例えば、チラシ限定特典をつくってキーワードを言ってもらう、ホームページにチラシからじゃないと入れない入口を作っておいてアクセス件数を記録するなどですね。
その上で、反響が取れた理由、反響が取れなった理由がどこにあったのかを探って今後のチラシづくりに活かしていけば、チラシづくりはどんどん楽しくなっていきます。
反響のあるチラシをつくって、売上をアップさせてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
もし、反響が出ない、上手く作れない、社内のチラシづくりのスキルをアップさせたいといったお悩みがあるならご相談ください。
お手伝いさせていただきます。